レーベルスタッフ座談会

 <藤枝 憲(Label Producer)× 山本貴政(A&R)

 <第三章> 『日本人は30歳を過ぎてもまだまだ成長できる人種だ by オシム』


藤枝「もしかしたら誤解を招く、言い方かもしれないけどトミーは物凄く『ロマンティック』だし、『センチメンタル』なバンドだよね。多分、そういうものの持ってる『なんか分かんないけどグッとくる』感じを知ってるし、そういう感じを如何にして音楽の表現として伝えたらいいかを常に考えてる感じがする。」

山本「だから音の好みは違っても、このリアルな感覚はたくさんの人に伝わると思うんだよね。ある意味、ドキュメンタリーみたい。彼らは30歳前後だけど、まだ歳を取らずにバンドをやれている意味を音で出せてる。年寄りではないけれども若者ではない季節の青春感というか。佐野元春が「男には何度でも青春がやってくるんだ。俺はもう若者じゃないけどね」って言ってたんだけど、なんか、そんなことを思い出した。もしくは、オザケンの『ライフ』にあった、ある年代のリアルな躍動感というか。今は『お前のことなんかどうでもいいんだよ』っていうしょうもない等身大ソングが多いから、よけいに胸に響くね。」

藤枝「うん。基本的には、トミーの歌詞って重要なセンテンスがひとつあって、あとは語感を重視してると思ってたのね。でも、今回、ちゃんとに歌詞を読んでみて、ちょっと驚いた。だから、その山本さんの言うところの『若者ではない季節の青春感』『ある年代のリアルな躍動感』というのは成る程なって思う。ファーストから比べても、歌詞が明らかに変化してるし、言葉の選び方や全体の言いたい気分みたいなものがかなり共感できる。共感って言葉にしちゃうと非常に陳腐だけど。言葉にならないムードみたいなものをよく表せてると思うのね」

山本「その感じは、彼らが作ってきた全曲PV(アルバム収録の全9曲分のPVを6万円という驚愕の予算で、メンバーとその友達たちでわずか数週間で制作!!)にも良く出てる。プロには録れないが故の良さというか。その人にしかできないものというか。最低で最高でやたらとリアリティーがある実存クリエイティブ。で、時々ドキってするくらいカッコいい瞬間がある。ある映像のディレクターににトミーのPVを見せたら『今こそ、タケイグッドマンみたいな若者がこういう映像を撮るべき時なんですけどね。この絵はずるいですよ。プロが頭でこういうものって考えた時点でいやらしくて見てられなくなる種類の絵ですから』って言ってた。」

藤枝
「この感じって、ほんとにどうやったら出るんだろうね。もうさ、演奏シーンとかでまったく関係ないオッサンとか写ってるんだけど、そのまったく関係ないオッサンとメンバーの比重が一緒っていう(笑)。」

山本「そうそう。全曲PVはキャスティングが最高。メンバーが一人いない日とかあるのに気にせず撮影してるしね(笑)。普通だったらメンバー全員揃ってないと駄目じゃん。代わりに友達とかが写ってて、でも説明もないから初めてみる人は誰がメンバーで誰がメンバーでないのかが、わからなそうなのがまたいい。」

藤枝「これは、ほんとに、見てもらわないと分かんないと思うけど。カルトムービーやインディのドキュメンタリー映画のような空気感というか、音楽以上にセンスを感じるな。白バイに駐禁切られるシーンが永遠に続くPVとかさ、メンバーの一日を追うだけのやつとか、夜中の横断歩道でひたすら歌い続けるだけのもそうだけど、なんか曲とはまったく関係なさそうなんだけど、なんかグッとくる瞬間が多々あるんだよね。」

山本「見終わった後に変な感動があるよね。全然、感動するような絵ではないんだけど(笑)。ダメ男キャラが満載なアメリカ映画、ねじが5・6本緩んでる感じのやつ。あのテイストに泣ける人にはたまらないフィーリング。ポール・トーマス・アンダーソンの『ブギ−ナイツ』や『マグのリア』、ジョン・ウォーターズの『ペッカー』とか、ラス・メイヤーの映画とか。で、なんで感動なのかなと考えていたんだけど、全曲PVに出てくる彼らとその友達たちがようするにそういう映画に出てくる人と同じなんだよね。」

藤枝
「そう(笑)。結局、人間力の凄さっていう。」

山本「そういう映画にでてくるキャラクター達は、上手くいってなかったり、ダメだと思われてたり、複雑な人間だったりするんだけど、でも、実は愛情にすごく溢れている優しい人達なんだよね。誤解を受けることが多いんだけど。で、いざという時に実は逃げないハートも持っている人達。そのダメ具合と熱いハートのブレンドが、胸にグッとくるというか。この全曲PVを見ていて、『ああ、やっぱりトミーはいいな』って思ったよ。」

藤枝「そうだね。改めて、これは本物だなと思った。まぁ、後は、何はともあれ一度ライブに足を運んでもらって体感してほしいよね。しかも最前列で(笑)。それでさ『トミーを観てバンド始めました』みたいなキッズが出てきたら、最高だね。いや、それはちょっと気持ち悪いか(笑)。」

山本「いいじゃん。『僕にも出来た』って感じでさ。さっき藤枝君がトミーを『ロマンティック』とか『センチメンタル』とか言ってたけど、ただ男でそういう要素が染みてくるのは人生の年輪をある程度経てないとなかなか説得力がでてこないよね。一度切りのティーンエイジャー期の青き爆発を逃してしまうと。そういった『センチメンタル』や『ロマンティック』は、20代半ばだと、ややもするとただのモラトリアムになってしまうから。で、もういい年齢にもなってまだそういうものを貫いていたら、それが大人の男の色気になる人もいると。良く言うとね。悪く言うとダメな大人だと思うけど。まあ、そういう意味では今のトミーはかなりロマンティック。メンバーみんなにそれはあてはまるんじゃないかな。サッカー日本代表のオシム監督も日本人についていいこと言ってたよ。『日本人は30歳を過ぎてもまだまだ成長できる人種だ』って。トミーで言うと大野君は天才なんだけど、ひとつひとつに時間がかかるタイプだから、いよいよいい具合に天才が花開いてきたところだと思う。浮気せずに音楽をやってきているから『続けることが大切』ということを体現できてきていると思うし。今年の桜の開花予想がちょうどトミーのアルバムの発売日と同じ3月19日だったから、トミーの桜も満開になるんだと思うよ。」

藤枝「なんか、スゲーいい話だなそれ(笑)。そのオシムの言葉通りなら、俺らもまだまだ成長出来るかな。肉体的にはもう絶望的だけど。実は俺、ちょっと身体が最近心配だったのね、で、年明けてすぐに人間ドッグを予約してさ、学生の頃以来だから健康診断自体がもうすでに10年ぶりくらいで。で、先日行ってきたんだけど、血管年齢が58歳って言われて。もうあと2年もしたら定年だよ。今、まだ32歳だから、倍くらいのスピードで身体が年老いてるっていう(笑)。他にもヤバイ数値が沢山並んでて『今のままの生活を続けるんならいつ死んでもおかしくない』って言われて。。。俺はこれからが青春だと思ってたからさ。30過ぎて、ようやく第2モテ期に突入するんじゃないかと思ってたのに。」

山本「(笑)でも、レコーディングの時の大野君を見てて、女の子ならすごいモテてるかなと思う瞬間がいっぱいあった。天才ゆえの振る舞いが天然のいい感じになって、揺れないハートも持っていて、時代の空気を掴む力というか、鼻が効くタフなところもあって、そういう信念と天然との間に見える揺らぎが時にカッコ良かったり、キュートだったり、ダメだったり(笑)。ゆうこりんのタフさと通じるのかなとか思ってた。本人にそれを言ったら嫌がってたけど(笑)。ゆうこりんも計算高さが嫌われてたりもするんだろうけど、ゴシップ情報だとさんまの番組でよゐこの濱口とのことを突っ込まれて『付き合ってないなんて言ったら濱口さんに失礼です』って言って、さんまがカメラを止めさせたらしい。男らしいね。ゆうこりんは。俺、その台詞聞いて泣きそうになったよ。やっぱり本物はいざというときはガッツのある振る舞いができる人達だから。ハートが違うというか。まあ、天才のずれから生まれる天然と、凡人の計算する天然との違いだよね。本物か偽者かといったところかな。でも実際にモテそうなんだけどね。大野君。好き者は多いと思うよ。事実、王子系のアーティストと似たようなオーラを出す瞬間があるし。Coa Recordsで言うとHARCOが王子なんだと思うけど、じゃあ、大野君は裏王子ということで(笑)。で、そんな大野君を囲みながら、他のメンバー達もいいキャラ立ちと役割分担ができているから、ようやくフォーメーションは完成したというところだよね。だからこれからは、ガシガシ他流試合上等でどんどん外の世界に出て活動していって欲しいね。」

藤枝「そうだね、大野君ももしかしたら出身は『コリン星』かもしれないしね。」



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